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令和6年 年頭所感
近畿経済産業局長 信谷 和重
令和6年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年の関西経済は、不安定な国際情勢に伴う国際的な原材料やエネルギー価格の上昇、国内需要の回復による人手不足等があったものの、政府による国内投資を促進する政策展開もあり、企業に積極的な投資姿勢が見られるようになりました。また、新型コロナウイルスの5 類感染症への移行やインバウンド需要の回復、関西に本拠地を置くプロ野球球団による59 年ぶりの両リーグ優勝に伴う個人消費が増加したことにより、1 年を通して緩やかに持ち直してきました。
一方、日本経済に目を向けると、低物価・低賃金・低成長に象徴されるデフレの悪循環から潮目が変わり、30 年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスを迎えています。構造的な賃上げや活発な設備投資により経済が好循環する新しいステージへと移行させていくため、政府は昨年11 月に、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化する「供給力の強化」、物価高を乗り越える「国民への還元」を車の両輪とする「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を策定し、その裏付けとなる令和5 年度補正予算を編成しました。
これらの動向を踏まえ、近畿経済産業局では、以下の3つのキーワードのもと、昨年4月に設定した当局の重点分野に基づき、関西から日本の未来を創るというミッションの実現に向けて、職員一丸となって関西経済、ひいては日本経済の活性化に向けた様々な取組を行ってまいります。
1つ目は「新たなリーディング産業の育成・イノベーションの創出」です。
関西を取り巻く環境は、地政学的リスクの拡大、人手不足等の課題、デジタル化による産業構造の転換等、大きく変化しています。これらの変化に対応するためには良質な雇用を生み出し、国際的な競争力を持っている新たなリーディング産業の育成が不可欠です。カーボンニュートラルに関連した蓄電池産業、バイオ関連産業、水素関連産業の高いポテンシャルを活かし、これら産業を更に強化し、活性化させるべく、人材育成支援、異分野からの参入支援等を行ってまいります。
また、関西の持続的発展を実現するためには、新たな価値を生み、次の産業を創るイノベーションの創出が必要です。地域の産学官金連携によるイノベーションエコシステムを構築し、大学、大企業等と「J-Startup KANSAI 企業」に選定された有望スタートアップとの連携による新事業の創出等、関西発の新たな価値を生み出すイノベーションを加速してまいります。
2つ目は、「中堅・中小企業の『稼ぐ力』の強化」です。
我が国では、上述のような国内外での急激な社会経済構造の変化が起こっており、中堅・中小企業においてもこれらの変化を成長する好機と捉え、自己変革に挑戦することが必要です。関西に数多く存在する日本を代表する優れた中堅・中小企業の自己変革を後押しするため、中堅・中小企業の設備投資やDX、カーボンニュートラルへの取組支援や人材の有効活用等を通じた生産性の向上を促すとともに、より積極的な賃上げ支援や価格転嫁対策、資金繰り支援を行ってまいります。
3つ目は「万博の活用と海外需要を取り込んだ企業の成長促進」です。
2025 年4 月から開催される大阪・関西万博の開幕まで、残り500 日を切りました。すでにパビリオンの建設や入場チケットの前売販売、関連イベントが始まっており、開催に向けた機運が盛り上がりつつあります。大阪・関西万博は、またとない経済躍進のチャンスです。
このチャンスを活かすため、会場内では日本のものづくり技術やアニメ等のコンテンツの素晴らしさを体験いただいたり、スタートアップ企業の魅力や価値を感じていただく企画の検討を進めるとともに、会場外でも地域の産業、歴史文化、食などの魅力を国内外に広く発信し、関西各地への誘客を促進する取組を地域とともに行ってまいります。
なお、関西では、ものづくり中小企業が地域で一丸となって、来訪者に生産現場を見て体験してもらうオープンファクトリーの動きが盛んになっています。また、企業や産地組合、自治体が一体となって地域資源のブランド化を目指す取組も各地で次々に行われています。こうした各地の取組を繋ぎ、地域一体のプロジェクトとして支援することで相乗効果を図り、関西全体としての魅力を高めてまいります。
以上の3つのキーワードを柱に、関西が日本の発展を牽引し、世界をリードしていくために、当局職員は一丸となって取り組んでまいります。
結びに、経済産業行政への御理解と御協力をお願いするとともに、皆様の御多幸と御健勝を祈念いたしまして、新年の御挨拶といたします。